歯を残す取り組み

横浜予防歯科医療センター・さいとう歯科16年の実績(データ)の一例です
「予防歯科・歯を残す」ってどういうこと?
まず最初は、この表から。
13年前、さいとう歯科に初診でいらしたA様のデータです。
虫歯や歯周病を繰り返し、他の医院で抜歯を余儀なくされてきました。
すでに11本の歯を抜き、外見も気持ちも若々しいのに入れ歯をなさっていました。
当院を信じて「これ以上、歯を失わないように」頑張って通院してくださった結果が下の表です。

次は、別の患者B様。
残念ながら初診時、3本は私どもにも救えない状態でした。
しかし「これ以上、歯を失わないように」当院を信じて頑張ってくださったのです。

【予防歯科・歯を残す】1つ目のテーマは、神経を残すことです。

下のグラフは平成22年1年間に、やむを得ず当院で抜歯したデータ。95%は、神経を取った歯でした。


神経を取る治療…何が悪いの?

神経は、私たちに痛みを伝えます。
ですから「痛みを取り去るためには、神経を取ればいい」という治療が長く行われてきました。
しかし神経には、血管からの栄養を歯に運ぶ大切な役割があるのです。
即ち、神経を取った歯には栄養が運ばれず、歯はミイラのようになってしまいます。
ミイラ化した歯は脆弱になり、年月が経つうちにかぶせものの中で腐ったり割れたりしてトラブルの原因となります。
しかし神経を取ったせいで痛みを感じないので最初は気づかず、
腫れて歯医者に来るころには抜歯せざるを得ない事態になっていることも少なくありません。
当院でこれまで抜歯した90%前後は、すでに神経を取っていた歯でした。

【神経のない歯で抜いた歯の数】÷【抜いた歯の数】
       平成23年 33÷37→89%
       平成24年 27÷28→96%
       平成25年 18÷20→90%

つまり「神経を残す」ことが「歯を残す」大きな1歩です。

さいとう歯科で神経を取った歯の数
5本(平成23年)→6本(平成24年)→5本(平成25年)→2本(平成26年は物凄い結果になりました)

「でも私の歯は、既に神経を取ってしまいました…」
そういう方も、現実には多いと思います。
上で、神経を取った歯は抜歯に至ることが多いと述べました。
でも、あきらめないでください。
さいとう歯科では、神経を取った歯を残す努力もしています。
血液によって栄養が与えられないミイラ化した歯を残すのは容易ではありません。
患者さんにも多少の努力をお願いすることにはなりますが、可能性はあるんです!
義歯もインプラントも、身体にとって自然なものではありません。ぜひご自分の歯を残しましょう。
また追って具体的なお話をしますのでご期待ください。


【予防歯科・歯を残す】2つ目のテーマは、歯周病を放置しないこと

上のグラフは平成22年1年間に、当院で抜歯したデータ。67%が歯周ポケットが6mm以上になった歯でした。
歯周病は静かなる病気です。初期では痛みがほとんどありません。
気付いたときには重度になっているので厄介です。
その基準になる歯周ポケット【歯と歯ぐきの境目にある溝】の説明からします。

歯周病が進行すると歯のお掃除ができなくなります。
本物そっくりの歯の模型で歯周ポケットのなかで汚れの溜まるところを黒く塗ってみました。
6mm以上になると歯根はかなり真っ黒です。清潔にするのが困難になるのがわかるでしょう。

【左上の一番大きな歯】


【左下の一番大きな歯】

歯周ポケットが3mmから6mmに悪化したら『たった3mm?』と思う患者さんもいるかもしれません。歯にとって3mmの悪化は大変なことになっています。それを歯の模型で視覚化しました。歯周ポケットのなかのお掃除がとっても難しくなっているのがわかりますよね!


つまり「歯周ポケットが一度でも6mm以上になる」と、抜歯に至る確率がとても高くなります

お掃除が難しい状態になると歯を残すのが困難になります。
さらにそれは単なる汚れではありません。
歯周病菌による細菌汚染です。その汚染は歯が抜けないように守っている歯根膜を崩壊してミイラ化します。
人体において死んだ状態になったものは元には戻りません。
従って「歯周ポケットが一度でも6mm以上になる」と、治療しても健康な状態への回復は不可能になってしまいます。
腫れや痛みがおさまっても治ったのではありません。
歯周病菌が崩壊のエネルギーをためては急性化を繰り返し、最期は抜け落ちます。


【予防歯科・歯を残す まとめ その1】
 1.神経を残す
 2.歯周ポケット6mm以上にしない
この1.2.を徹底すればご自分の歯は残ります。

さいとう歯科では上記の1.2.以外で歯を抜くことはありません。
【ただし、機能させるのが困難な歯のケース(親知らずなど)や事故による外傷の抜歯は除きます】

『歯を残す』ために何をしたらいいのかを明確にすることで『一生ご自分の歯で噛める』ことが現実化します。
前述の2人 A様、B様のケースのように治療を繰り返し歯医者に通っているのに歯を失ってしまう
…その流れは変えることは充分可能です。


さて、上記の1.2.を実行するうえで大きな問題がでてきます。
「痛い」「腫れた」など自覚症状がでてからでないと歯医者になかなかいらしていただけません。
自覚症状がでてからではすでに崩壊が起きてしまっていて遅いのです。

この問題を解決するために、
さいとう歯科では歯科衛生士によるプロフェッショナルケア【主にメンテナンスで】ご提案しています。

患者さん一人で細菌汚染による崩壊から歯を守るのは難しいからです。(患者さんでは清潔にできないところがあります。ずっと汚染されたところがあるのは危険です…特に歯周ポケット内)
その汚染の除去を歯科衛生士がお手伝いしましょうという発想です。
100%を目指したプラークコントロール(細菌の無害化)が『歯を守る』ことになります。

また、初期段階で気づけば崩壊を未然に防ぐことも可能になり安心です。


このプロフェッショナルケアを徹底した歯科医療先進国スウェーデンのデータがあります。
下のとおりです。皆様はどちらがいいですか? 

【予防歯科先進国 スウェーデンの歯科衛生士 ブリギッタ・ニースレンさんの回顧録】
1960年頃まで、スウェーデンは虫歯洪水状態でした。
当時、国民の多くが「年をとれば歯が悪くなるのは仕方がない」と思っていて、
歯が痛くなってから歯科医院に行くのが当たり前でした。
転機が訪れたのは1970年頃。予防歯科への取り組みがスタートしました。
その結果が画期的なものになったため、歯を守る絶対的な存在として歯科衛生士の地位が高まりました。
さらに「歯の健康を維持できると人生が楽しくなる♪」と国民が実感したことで、
プロフェッショナルケアを担う歯科衛生士が必要不可欠な存在になったと思います。


すでに『多数の歯の神経を取ってしまった』『重度の歯周病になってしまった』『何本か歯を抜いている』
そんな方はどうしたらいいんでしょうか?
次の【予防歯科テーマ3 噛み合わせ】で説明します。